『橋桁の落書』
すぐやる課の龍之介と、その手伝いをしてやると言ってしまった住民課の東は橋桁に書かれた落書きを消しにくる。そこには十五、六人が代わる代わるメッセージを書いていた。そこはインターネットの掲示板のように活用されていたのだった。壁一面に書かれた若者の魂の叫びを見て、二人は自分の若い頃のことをふと思い出す。

 インターネットの掲示板(の概念)を演劇にとり込めないかとは、ずいぶん前から思っていたのです。ある人はそういったネットの掲示板でなければ本当の自分の気持ちを吐露することができず、ある人はそれを「便所の落書き」と言います。新しいコミュニケーションツールであることは間違いないのですが、はて、どうすればそれが演劇になるのか? と思ったのです。というのが一つ。それとこれは元々『すぐやる課Xファイル』というコードネームで考えていたものです。龍之介が配属されている役所の『すぐやる課』にとんでもない怪事件がもちこまれるのはどうだろう? その怪事件に遭遇し、なんとなく解決する、もしくは命からがら逃げ出す、などする、でも、その怪事件の元凶はまったく説明されない。という話ですね。『Xファイル』だったり『ウルトラQ』だったりするわけです。龍之介が市民からの通報で現場に向かい、とんでもない物を見る。そのとんでもない物をあれこれ思い悩み、二転三転したのちに、ネットの掲示板のような物が橋桁にあった。となった次第です。

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